垂水市柊原(くぬぎばる)地区に伝わります伝統行事の「おろごめ」について、柊原地区公民館主事の田原文男様にお聞きすることが出来ました。
 この行事は、{上東郷「川内地方」郷土資料によると} 藩政時代に「苙馬追」は年中行事の一つで、最も男性的で勇壮を極めたものでオロヤマに牧場を作り、平時は「牧司」数名が警戒に当り、毎年「四月中」「卯月の日」に、子馬(二才馬)を生け捕りをし当日は六郷が大小幾多の旗をひるがえし御所に円陣を作り、捕手たちは大旗小旗を打ち振り馬をかり立て、かねて設けた「苙・オロ」に追い込み捕まえたもので、予定数だけ捕獲したら終わりとされ捕まえた二才馬は藩庁に送り軍馬に育成された、と書かれています島津公が士気を高めるために行ったという説も伝えられています。尚、五穀豊穣も祈願されていました。
 その様子が勇壮だったために、子供達の健やかな成長を願って、近年は小学校一年生から六年生までの男の子の行事として残りました。節句の(今は6月5日に行われます)早朝に行われますが、数日前から子供達が集まって海浜に苙(七尺=約2.5m四方)の角型で深さ五尺(約1.5m、一方に三尺幅の入口を作る)を掘ります。
 六年生がオヤガシラ 五年生以下はコガシラで、当日は未明(午前3時頃)に起きて集落ごとに集合して、松明で道を照らし「荒馬引き出す馬合戦」「子馬引き出す馬合戦」の幟旗を持ちホラ貝をを吹きながら山に登り、一番頂上に陣旗を立て苙に下ってきます。
 みな、六尺フンドシ一枚の姿になり苙に入る。小学校五年生以下が駒となり、小学校六年生のオヤガシラがそれを捕まえて苙の「おろんくち」入口に引き出そうとします。コガシラはオヤガシラを入口以外の砂壁から担ぎ上げようとします。互いに「蹴ったり、たたいたり」「耳を引っ張ったり」(耳を引っ張れるのはオヤガシラだけ)して、やっと どちらかが全員を連れ出すと勝負がつき、また繰り返し行われます。
 親や近所の声援が海岸に響く中、白々と夜が明けてきます。苦しかった肉弾戦の想い出は、いつまでも忘れることはないでしょう。この行事は、県内各地で行われていましたが、現在は柊原地区だけに現存しています。
昨年(2009年)の6月5日はテレビに放送されました。
 今回、お話して頂きました田原さんには、本当にありがとうございました。また、柊原地区公民館の森山稔館長にもお礼を申し上げます。今後とも、よろしくお願いします。
  (写真は2009年6月の「おろごめ」です)
                             

扇寿堂
                            senjudou

  
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